シーム溶接疲労解析

シーム溶接疲労解析は、シーム溶接された構造の疲労解析を容易にするために使用できます。この解析では、シーム溶接ジョイントにおける疲労破壊をシミュレートして、対応する疲労破壊特性(損傷や寿命など)を評価できます。

OptiStructでシーム溶接疲労解析を実行するには、現時点では次の2つの手法を使用できます。
  • Volvo法(FATPARMエントリのMETHOD=VOLVO
  • Joint Line法(FATPARMエントリのMETHOD=JNTLINE

OptiStructで実装されているVolvo法は、M. Fermér、M Andréasson、およびB Frodinによって発行された研究論文Fatigue Life Prediction of MAG-Welded Thin-Sheet Structuresに基づいています。この方式は、薄いメタルシートに適用可能なホットスポット応力アプローチです。ホットスポット応力は溶接線における節点力から計算されます。この方式は、1.0~3.0mmのシート厚に対し、ラボでのテスト結果と十分な一致を示しています。通常、この方式では、2つのS-N曲線が必要です。1つは曲げ応力による曲げS-N曲線で、もう1つは面内応力による面内S-N曲線です。

Joint Line法は、対象のジョイントまたは溶接線から特定の評価距離内にある応力の直接計算に基づいています。また、Volve法とは異なり、Joint Line法では溶接要素はモデル化されません。Joint Line法では、損傷評価はルート位置のみで行われます。

インプリメンテーション

モデリング要件:Volvo法

Volvo法では、OptiStructのシーム溶接疲労解析のインプリメンテーションは、次のモデリング要件で構成されます。
  1. シーム溶接疲労を解析する溶接部は、可能な限り、CQUAD4要素でメッシュする必要があります。回避できない場合や溶接線を終端させる場合は、必要に応じて、コーナー溶接にCTRIA3要素を使用できます。他の要素タイプは、現在、シーム溶接疲労に対してサポートされていません。
  2. 溶接は、1列または2列のCQUAD4要素でモデリングする必要があります。両側フィレットをモデリングする場合は、3列目のCQUAD4を使用できます。
  3. 溶接要素の厚みは有効スロート厚と同じです。
  4. 溶接の周りのメッシュサイズはできるだけ均一にする必要があります。この方式はメッシュサイズの影響をあまり受けませんが、Fermér、Andréasson、およびFrodinによれば、約10mmのメッシュサイズが妥当です。この論文では、均一なメッシュの場合、12mmと5mmのメッシュサイズの間に大きなホットスポット応力の違いがないことが示されています。
  5. 溶接要素には、FATSEAMバルクデータエントリのPIDiフィールドで参照される専用のプロパティIDを割り当てる必要があります。詳細については、入力 / 出力をご参照ください。このプロパティは、力変換器として十分な剛性を持たせる必要があります。
  6. 溶接要素の法線方向は、溶接ルート部ではなく、溶接トウ部に向くように外側に向ける必要があります。溶接要素の法線方向は、溶接のベースで検証する溶接トウとサーフェスを決定する際に重要な役割を果たします。

モデリング要件:Joint Line法

Joint Line法では、OptiStructのシーム溶接疲労解析のインプリメンテーションは、次のモデリング要件で構成されます。
  1. Volvo法とは異なり、Joint Line法では溶接自体はモデル化されません。
  2. 溶接のラインまたはジョイントは、PLOTEL要素を使って表す必要があります。
  3. これらの要素はFATSEAMバルクデータエントリのELSET継続行上のSETとして参照されなくてはなりません。
  4. メッシュ密度での不一致は、ジョイントラインの両側で許されます。
  5. ジョイントラインにおいて溶接された2つもしくはそれ以上のシェル要素パートの法線方向は、HyperMeshで可視化できます。溶接の側(疲労損傷が評価される側)は、FATSEAMエントリのWLDSIDEフィールドに基づいて決定されます。
  6. 同じ溶接ラインとREFEIDを共有する要素はすべて、対応するREFEID要素により認識される要素法線と一致する一貫した要素法線を有していなければなりません。

溶接の基本

溶接は2つのパートを接合するのに使用できます。溶接は、必要なジョイントのタイプに応じて形状や寸法が異なります。たとえば、フィレットとオーバーラップジョイントの溶接は異なります。一般的に、溶接は次のパートで構成されます:
  • フェイス
  • トウ
  • スロート
  • ルート
  • レッグ
溶接のフェイスは、溶接の外側の見える側のサーフェスです。トウは、結合するプレートのベース材料が溶接フェイスに沿って溶接材料と交差するポイントです。溶接スロートは、ルートとフェイスの中心間の距離です。溶接ルートは、最も深い溶け込みポイントで、溶接フェイスの反対側です。溶接レッグは、溶接のルートからトウまでの範囲です。


図 1. 基本溶接構造

溶接設計の優れた実践方法

この項では、溶接構造内の応力集中の基本的な概要と優れた溶接設計のための推奨事項について説明します。この項は、溶接設計の推奨事項を網羅しているわけではないため、完全な溶接設計ガイドとして見なさなでください。

すべての溶接において疲労寿命を縮める応力集中が発生します。局所応力集中は、溶接のトウで発生し、溶接プロセスの条件に左右されます。この応力集中は、溶接ジョイントの設計の結果である巨視的応力集中に組み込まれます。
  • 溶接形状ベースの応力集中:
    図 2 は、溶接のトウにおける応力集中を示しています。その大きさは、フランク角 θ 、局所溶接トウ半径rおよびプレート板厚tで決まります。溶接金属が増える、つまりフランク角 θ が大きくなると、実際に応力集中が増大することが確認できるため、溶接補強という概念は誤りです。


    図 2. シーム溶接疲労に関する応力集中と溶接半径およびプレート板厚の関係
  • 溶接設計ベースの応力集中:

    2つ目の応力集中はジョイント設計からもたらされます。構造内で剛性が変化すると必ず応力集中が発生します。これは、剛性の増加または減少に起因します。たとえば、プレートの穴は、プレートに追加された剛体ボスとほぼ同じ応力集中を示します。ここで、溶接ジョイント例を優れた設計と不良な設計で比較して示します。

    まず、曲がったビームに溶接されたカバープレートについて考えます。カバープレートの端では、剛性が大きく変化するため、大きな応力集中が発生します。剛性が段階的に変化する良好な設計を右側に示します。


    図 3. (a) 間違った溶接設計 (b) 正しい溶接設計:段階的剛性勾配
    2つ目の応力集中の発生源は、非対称形状によって引き起こされる不測の曲げ応力です。左側の設計では、右側のダブルラップジョイントより大きな曲げ応力が発生します。


    図 4. (a) 間違った溶接設計 (b) 正しい溶接設計:ダブルラップジョイント対称形状
    厚みまたは幅が異なるプレートの溶接には問題がつきものです。上と同様に、最も簡単な溶接形状で最も大きい応力集中が発生します。必ず、溶接は構造内の応力の少ない領域に移動するよう考慮し、図 5(b)に示すジョイントのように剛性を段階的に移行させる必要があります。

    seamweld_fig4
    図 5. (a) 間違った溶接設計 (b) 正しい溶接設計:段階的剛性移行

Volvo法

サポートされている溶接タイプ

OptiStructは、シーム溶接疲労解析用に特定の溶接タイプをサポートします。

タイプは、FATSEAMバルクデータエントリのWTYPEフィールドを使用して選択できます。
  • 溶接フェイス要素または溶接レッグのいずれかに対して定義できる要素の列は1つのみです。
  • 損傷計算位置は、溶接タイプに基づいて自動的に選択されます(フィレットを参照)。スロート損傷位置を除いて、ルートとトウの両方の損傷位置が、溶接要素に隣接する対応する要素で発生する節点力とそれに続く応力に基づいて評価されます。スロート損傷の場合は、溶接要素の節点力とそれに続く応力が直接考慮されます。
  • OptiStructは、現在、以下の溶接タイプをサポートしています。

フィレット

フィレット溶接は、ある角度で2つのシートを接合する溶接です。代表的な損傷位置を図 6(a)に示します。フィレット溶接は、図 6(b)のような傾いたCQUAD4によってモデリングできます。溶け込みの量に応じて、溶接を1列または2列のCQUAD4でモデリングできます。両側フィレットをモデリングする場合は、3列のCQUAD4を使用できます。


図 6. (a) フィレット溶接の構造; (b) Tジョイントシーム溶接要素の表現

OptiStructは、溶接要素がCQUAD4の場合に、ルートとトウでの損傷を評価します。CTRIA3が溶接要素として使用されている場合は、トウのみが評価されます。

Tジョイント

  • 片側1列
    片側1列のTジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を溶接トウに向ける必要があります。溶接要素の節点は溶接トウと一致します。長さは、溶接要素の実際の寸法(一般的には、L=T1+T2)で決定する必要があります。


    図 7. 1列のCQUAD4要素による片側Tジョイントフィレット溶接の表現

    溶接要素の厚みは、実効溶接スロート(通常はL/1.414)です。

  • 片側2列
    溶け込みが大きく、一般的に溶接によって2つのプレート間の接触の基礎が形成される溶接の場合は複数列をお勧めします。このような溶接は、溶け込みが小さい溶接よりも剛性が高くなるため、挙動を捕捉するには溶接シェル要素の追加の列が必要となります。図 8では、図 7よりも溶接が溶け込んでいます。片側2列のTジョイントの場合は、2つの溶接要素の法線方向を溶接トウに向ける必要があります。長さは、溶接要素の実際の寸法(一般的には、L=T1+T2)で決定する必要があります。


    図 8. 2列のCQUAD4要素による片側Tジョイントフィレット溶接の表現

    溶接要素の厚みは0.35*Lに設定することをお勧めします。

  • 両側2列
    両側2列のTジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。溶接要素の節点は対応する溶接トウと一致します。長さは、溶接要素の実際の寸法(一般的には、L=T1+T2)で決定する必要があります。


    図 9. 2列のCQUAD4要素による両側Tジョイントフィレット溶接の表現

    溶接要素の厚みは、個別の実効溶接スロート(標準は1.414*L)です。

  • 両側3列
    溶け込みが大きく、一般的に溶接によって2つのプレート間の接触の基礎が形成される溶接の場合は複数列をお勧めします。このような溶接は、溶け込みが小さい溶接よりも剛性が高くなるため、挙動を捕捉するには溶接シェル要素の追加の列が必要となります。図 10では、図 9よりも溶接が溶け込んでいます。両側3列のTジョイントの場合は、2つの溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。中央の垂直要素の溶接要素法線は要素トウに向けることができます。


    図 10. 3列のCQUAD4要素による両側Tジョイントフィレット溶接の表現

クロスジョイント

クロスジョイントの場合は、1つのクロスジョイント溶接に関連するすべての溶接要素を単一のFATSEAMエントリで指定する必要があります。そうしなかった場合、OptiStructはクロスジョイントフィレット溶接を別々の複数の溶接として扱い、予期せぬ結果を出力する可能性があります。クロスジョイントのもう1つの要件はジョイントを対称にしなければならないことです。
  • 片側1列
    片側1列のクロスジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。


    図 11. 各1列のCQUAD4要素による片側クロスジョイントフィレット溶接の表現
  • 片側2列

    溶け込みが大きく、一般的に溶接によって2つのプレート間の接触の基礎が形成される溶接の場合は複数列をお勧めします。このような溶接は、溶け込みが小さい溶接よりも剛性が高くなるため、挙動を捕捉するには溶接シェル要素の追加の列が必要となります。図 12では、図 11よりも溶接が溶け込んでいます。片側2列のクロスジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。垂直溶接要素の法線も、対応する溶接トウに向ける必要があります。



    図 12. 各2列のCQUAD4要素による片側クロスジョイントフィレット溶接の表現
  • 両側2列
    両側2列のクロスジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。


    図 13. 各2列のCQUAD4要素による両側クロスジョイントフィレット溶接の表現
  • 両側3列

    溶け込みが大きく、一般的に溶接によって2つのプレート間の接触の基礎が形成される溶接の場合は複数列をお勧めします。このような溶接は、溶け込みが小さい溶接よりも剛性が高くなるため、挙動を捕捉するには溶接シェル要素の追加の列が必要となります。図 14では、図 12よりも溶接が溶け込んでいます。

    両側3列のクロスジョイントの場合は、溶接要素の法線方向を、対応する溶接トウに向ける必要があります。垂直溶接要素の法線は、各側の溶接トウのいずれかに向けることができます。


    図 14. 各3列のCQUAD4要素による両側クロスジョイントフィレット溶接の表現

オーバーラップまたはレーザーエッジオーバーラップ

オーバーラップ溶接は、2つのオーバーラップしたシートを平行に接合する溶接です。 図 15 は、可能性のある損傷位置を示しています。OptiStructは、これらの位置を評価します。代表的な損傷位置を図 15に示します。オーバーラップ溶接は、垂直および傾いたCQUAD4でモデリングできます。溶け込みの量に応じて、溶接を1列または2列のCQUAD4でモデリングできます。


図 15. オーバーラップ溶接の構造

メッシングルールはフィレット溶接と同じです。溶接要素の法線方向は溶接トウに向ける必要があります。溶接節点は溶接トウのラインに沿っている必要があります。溶接要素の厚みは実効溶接スロートにする必要があります。レーザー溶接では、溶接スロートにおける損傷が溶接トウや溶接ルートと同様に評価されます。

2列オーバーラップ

溶け込みが大きく、一般的に溶接によって2つのプレート間の接触の基礎が形成される溶接の場合は複数列をお勧めします。このような溶接は、溶け込みが小さい溶接よりも剛性が高くなるため、挙動を捕捉するには溶接シェル要素の追加の列が必要となります。溶接要素の標準的な長さは、L=T1+T2です。

標準の溶接要素の厚みは約0.27*Lです。


図 16. 2列オーバーラップ溶接の表現

1列オーバーラップまたは1列レーザーエッジオーバーラップ

オーバーラップの場合は、溶接要素の厚みを薄い方のシートの厚みの2倍にする必要があります。その最小厚は3mmです。レーザーエッジオーバーラップの場合は、溶接要素の厚みを実効溶接スロートにする必要があります。これは、上側のシート厚の約0.7倍です。


図 17. 1列オーバーラップ溶接またはレーザーエッジオーバーラップ溶接の表現

1列オーバーラップまたは1列レーザーエッジオーバーラップ(代替)

上の溶接は、図 18に示すようにモデリングすることもできます。


図 18. 1列オーバーラップまたはレーザーエッジオーバーラップの代替アプローチの表現

レーザーオーバーラップ

溶接要素の厚みは溶接幅にする必要があります。溶接幅は、薄い方のシート厚の90%にする必要があります。その最小厚は1mmです。レーザーオーバーラップ溶接は非常に薄いシート(1mm超)に適しています。


図 19. レーザーオーバーラップ溶接の表現

損傷評価

損傷評価ポイントは、溶接タイプによって異なります。

以降では、シーム溶接疲労解析の損傷評価に使用される溶接要素の位置について説明します。 図 20 は、識別ポイントが以降の図でどのように示されているかを示しています。


図 20. エンティティを適切に識別するための属性

フィレット

溶接のトウとルートの位置が評価されます。スロートの位置は評価されません。
注: 図 21図 22の矢印は、評価対象のサーフェス(溶接要素に隣接するシェル要素のサーフェス)を示しています。


図 21. 1列フィレットの損傷位置


図 22. 2列フィレットの損傷位置

オーバーラップ

溶接のトウ要素とルート要素を図図 23図 24、および図 25に示します。溶接スロートは評価されません。


図 23. 2列オーバーラップの損傷位置


図 24. 1列オーバーラップの損傷位置


図 25. 1列オーバーラップの損傷位置(代替)

レーザーオーバーラップ

溶接のスロート要素とルート要素を図 26に示します。スロートのそれぞれの面に亀裂が入る可能性があるため、スロート要素の両面が評価されます。


図 26. レーザーオーバーラップの損傷位置

レーザーエッジオーバーラップ

スロート位置を評価する必要があります。したがって、現実的な結果を得るために単一列で溶接をモデリングする必要があります。


図 27. レーザーエッジオーバーラップの損傷位置

溶接スロートが評価されるサーフェスに注意してください。このサーフェスは、溶接要素の法線方向で決定されます。

ホットスポット応力

OptiStructは、トウ / ルート要素の節点力に基づいてホットスポット応力を計算します。

Fermér、Andréasson、Frodinが提案しているオリジナルのアプローチでは、目的の要素にかかる節点力が“調整”なしで直接使用されます。後の研究(P. FranssonとG. Pettersson、2000年)によって、節点力を平均化すると、節点力のメッシュ感度が下がることがわかっています。

OptiStructに実装された計算法には、後述する節点力の加重平均が含まれています。
  1. OptiStructは、溶接トウ、溶接ルート、溶接スロート、およびそれらの評価サーフェスにおける潜在的な損傷位置を溶接要素の位置と法線方向から特定します(前項を参照)。
  2. 対応するルート損傷位置とトウ損傷位置(隣接要素内)に対して、およびスロート(溶接要素内)内で、局所座標系が構築されます。局所X軸は、溶接線上の隣接要素の中心にある対応する溶接要素フェイスに垂直に離れる方向に構築されます(X軸は隣接要素の平面内に配置されます)。局所Y軸は、隣接要素の平面内のこのX軸に垂直に構築されます。


    図 28. シーム溶接応力計算の例
  3. 節点力は、溶接線に沿った隣接要素(2)のグリッド(QとR)で計算されます。節点力には、隣接要素に結合された要素(1と3)が寄与します。
    節点力は次の式で計算されます:(1) f Q = f Q 1 + f Q 2 (2) f R = f R 2 + f R 3
    モーメントは次のように表されます:(3) m Q = m Q 1 + m Q 2 (4) m R = m R 2 + m R 3
  4. 溶接線上に配置された隣接要素の各節点( Q R )では、溶接トウのライン上の隣接要素と結合要素の長さで重み付けされた節点力 / モーメントの平均が計算されます。
    重み付けされた力は次のように表されます:(5) f Q R I G H T = L 2 L 1 + L 2 f Q (6) f R L E F T = L 2 L 2 + L 3 f R
    重み付けされたモーメントは次のように表されます:(7) m Q R I G H T = L 2 L 1 + L 2 m Q (8) m R L E F T = L 2 L 2 + L 3 m R
  5. 線力とモーメントは、重み付けされた節点力とモーメントに基づいて計算されます。溶接線上の隣接要素の両端の線力とモーメントが平均化され、その中間点( L )での線力とモーメントが生成されます。
    線力は次の式で計算されます:(9) f L Q R I G H T = 2 L 2 ( 2 f Q R I G H T f R L E F T ) (10) f L R L E F T = 2 L 2 ( 2 f R L E F T f Q R I G H T )
    線モーメントは次の式で計算されます:(11) m L Q R I G H T = 2 L 2 ( 2 m Q R I G H T m R L E F T ) (12) m L R L E F T = 2 L 2 ( 2 m R L E F T m Q R I G H T )
    要素2の中間点 L における平均化された線力と線モーメントは、次のようになります:(13) f 2 = f L Q R I G H T + f L R L E F T 2 (14) m 2 = m L Q R I G H T + m L R L E F T 2
  6. その後、中間点における線力と線モーメントがステップ2で構築された局所座標系で解析され、それぞれ、 f 2 X m 2 Y が生成されます。この力とモーメントのペアから、溶接線に対する隣接要素内の引張応力と曲げ応力が導かれます。これらが応力の計算に使用される力です。
  7. その後、応力がこの力とモーメントのペアから隣接要素の溶接線に垂直に計算されます。応力はシェル要素の上部と下部の両方に対して計算され、溶接のタイプに応じて、そのどちらかまたは両方が疲労計算に使用されます。これが、さらなるS-N疲労損傷評価に使用される最終的なホットスポット応力です。追加の情報については、応力-寿命(S-N)アプローチをご参照ください。(15) σ T O P = f 2 X T + 6 m 2 Y T 2 (16) σ B O T T O M = f 2 X T 6 m 2 Y T 2

疲労プロパティ

疲労挙動を制御可能なシーム溶接疲労解析に関連したいくつかの疲労プロパティがあります。

曲げ率

M. Fermér、M Andréasson、およびB Frodinが提案している方式に基づいてシーム溶接疲労解析を実行するには、2種類のSN曲線が必要なことが実験により示されています。ラボテストに基づいて、2つのSN曲線がプロットされています(図 29)。上側の曲線は、最大応力が曲げモーメント( m 2 Y )に支配されるテストで取得されたものであり、下側の曲線は、最大応力が膜力( f 2 X )に支配されるテストから取得されたものです。


図 29. 例:曲げ支配構造と薄膜支配構造の応力振幅と疲労寿命ログ(N)の比較

上側の曲線と下側の曲線は、それぞれ、曲げSN曲線と膜SN曲線と呼ばれます。膜SN曲線は要素内で膜応力が支配的な場合に使用し、曲げSN曲線は曲げ応力が支配的な場合に使用することをお勧めします。曲げ支配の度合いに応じて2つの曲線の間で補間が行われる場合もあります。

曲げ支配の度合いは、平均曲げ率( r B A V G )によって決定できます。まず、曲げ率( r )は次のように定義されます:(17) r = | σ B | | σ B | + | σ M |
ここで、
σ B
右記と等しい最大曲げ応力; 6 m 2 Y T 2
σ M
右記と等しい最大膜応力; f 2 X T
要素の平均曲げ率( r B A V G )は次のように定義されます:(18) r B A V G = i = 1 n ( r i [ σ T O P 2 ] i ) i = 1 n [ σ T O P 2 ] i
ここで、
[ σ T O P 2 ] i
i は、損傷が計算されるシェル要素i(つまり、ルート、トウ、またはスロートシェル要素)の上面の最大応力の二乗
r i
シェル要素 i の曲げ率

は、

補間係数( I F )は次のように定義されます:

I F = 0.0 --右記の場合; 0.0 r B A V G r B C R I T

I F = r B A V G r B C R I T 1 r B C R I T --右記の場合; r B C R I T < r B A V G 1.0

r B C R I T 値は、PFATSMWバルクデータエントリBRATIOフィールドによって定義されます。これはデフォルトで0.5に設定されます。平均曲げ率( r B A V G )が臨界曲げ率( r B C R I T )以下の場合は、膜SN曲線が損傷の評価に使用されます。平均曲げ率が臨界曲げ率より大きい場合は、膜SN曲線と曲げSN曲線間で補間されたSN曲線が使用されます。補間係数( I F )の値は、図 30に示すように、線形補間法で使用されます。たとえば、補間する曲線の疲労強度係数値(SR1_i)を考慮する場合は、次のような計算が実行されます:(19) S R 1 _ i = [ S R 1 _ m + ( S R 1 _ b S R 1 _ m ) I F ] MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaam4uaiaadk facaaIXaGaai4xaiaadMgacqGH9aqpdaWadaqaaiaadofacaWGsbGa aGymaiaac+facaWGTbGaey4kaSYaaeWaaeaacaWGtbGaamOuaiaaig dacaGGFbGaamOyaiabgkHiTiaadofacaWGsbGaaGymaiaac+facaWG TbaacaGLOaGaayzkaaGaamysaiaadAeaaiaawUfacaGLDbaaaaa@4ECC@


図 30. 例:曲げ支配構造と薄膜支配構造の応力振幅と疲労寿命ログ(N)の比較

厚み補正

厚み補正プロセスは寸法効果補正用です。SN曲線は、特定の寸法の試験体によるテスト結果に基づきます。実際には、応力と寿命曲線は標本サイズによって異なる場合があります。そのため、厚み補正パラメータをこの効果の補正に使用できます。これは、疲労計算を考慮した各シェル要素(つまり、トウ、ルート、またはスロート要素)の厚み T に基づいて適用されます。計算は次のように行われます:

T T R E F MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamivaiabgs MiJkaadsfacaWGsbGaamyraiaadAeaaaa@3BC9@ の場合、厚み補正は行われません。

T > T R E F MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamivaiabg6 da+iaadsfacaWGsbGaamyraiaadAeaaaa@3B1C@ の場合、OptiStructOptiStructに基づいて応力を増加させます:(20) σ T O P / B O T T O M = σ T O P / B O T T O M ( T T R E F ) T R E F _ N

これにより、疲労寿命が縮まり、設計がより安全側になります。TREFTREF_NPFATSMWバルクデータエントリの対応するフィールド経由で定義できます。デフォルト値は、それぞれ1.0と0.2です。デフォルトはインチ単位(ポンドヤード法)メートル法が使用されている場合は、それに合わせて値を修正する必要があります。

シーム溶接疲労解析用に、FATPARMバルクデータエントリの対応するTHCKCORRフィールドを使用してのオンとオフを切り替えることができます。

平均応力補正

FKM平均応力補正がシーム溶接疲労に対してサポートされています。応力感度はMATFATバルクデータエントリで欄を介して定義できます。シーム溶接疲労の平均応力補正は、デフォルトで無効になっていますが、FATPARMバルクデータエントリの対応するCORRECTフィールドを介して有効にすることができます

入力 / 出力

シーム溶接疲労解析をアクティブにするには、FATDEFFATSEAMおよびPFATSMW識別子を擁する必要があります

疲労要素識別

  1. FATDEFバルクおよびサブケースエントリを使用して、疲労解析を実行する必要がある要素を識別できます。シーム溶接疲労の場合、FATSEAMエントリとPFATSMWエントリをFATDEFエントリで参照する必要があります。FATSEAMエントリは、疲労解析を実行する対応するシェル要素(CQUAD4CTRIA3)を識別します。
  2. FATDEFバルクデータエントリでは、シーム溶接疲労プロパティを定義するために設定された各FATSEAMエントリに対して、対応するPFATSMWバルクデータエントリ参照も提供されます。

疲労パラメータ

  1. FATPARMバルクデータおよびサブケースエントリを使用して、スポット溶接疲労解析のための疲労パラメータを指定できます。
  2. FATPARMエントリのSMWLD継続行を使用すると、シーム溶接疲労法を入力したり、さまざまなパラメータを識別することができます。
  3. PFATSMWバルクデータエントリでは、シーム溶接疲労解析のためのいくつかのプロパティの定義が可能です。

疲労材料

  1. MATFATバルクデータエントリを使用して、シーム溶接疲労解析のための材料特性を指定できます。
  2. SMWLD継続行を使用すると、平均応力感度値を指定したり、曲げSN曲線と膜SN曲線のSN曲線属性を分離することができます。曲げSN曲線と膜SN曲線は、SMWLDフラグの後のMATFATで定義することができます。シーム溶接用のSN曲線が1つしか定義されていない場合は、それが曲げSN曲線と膜SN曲線の両方として使用されます。

疲労荷重

  1. 通常の疲労解析と同様に、FATLOADFATSEQ、およびFATEVNTエントリを使用して荷重順序を定義できます。

最適化

  1. シーム溶接疲労最適化のために、DRESP1エントリのPTYPEフィールドはFATSEAMに設定することができ、ATTiフィールドはFATSEAM識別番号にする必要があります。

出力

Joint Line法

サポートされている溶接タイプ

OptiStructは、Joint Line法を使用したシーム溶接疲労解析に特定の溶接タイプをサポートします。

タイプは、FATSEAMバルクデータエントリのWTYPEフィールドを使用して選択できます。
  • Joint Line法の使用時は、溶接要素をモデル化しないでください。
  • 同じ溶接線およびREFEIDを共有しているすべての要素は、対応するREFEID要素によって特定される要素法線と一致する一貫した要素法線を持っている必要があります。
  • 損傷計算位置は溶接のトウのみで構成されており、これらの位置は、以下の説明のとおり、評価距離(PFATSMWエントリのEVALDISフィールド)に基づいています。
  • EVALDISの計算の詳細については、PFATSMWエントリをご参照ください。
  • OptiStructは現在、Joint Line法で次の溶接タイプをサポートしています。

    WTYPE = L, T, GENERIC, BUTT

フィレット

フィレット溶接は、ある角度で2つのシートを接合する溶接です。Joint Line法では、2タイプのフィレット溶接がサポートされています(LT)。疲労計算は黄色で示された位置で行われます。

Lフィレット溶接とは、ある角度で2つのシートを接合する溶接のことです。溶接は、交差箇所の1つの角のみに施されます。


図 33. Lフィレット
Tフィレット溶接とは、ある角度で2つのシートを接合する溶接のことです。溶接は、交差箇所の隣接する2つの角に施されます。


図 34. Tフィレット
一般溶接とは、ある角度で2つ以上のシートを接合する溶接のことです。溶接は、任意の2つのプレート間の交差箇所の隣接するすべての角に施されます。


図 35. 一般溶接
突合わせ溶接とは、相互にある角度を形成している2つのシートを接合する溶接のことです。一般に、これらのシートは互いに180度の角度となっています。溶接は、両方のプレート同士を接合するように施されます。


図 36. 突合わせ溶接