グローバル-ローカル解析(サブモデリング)

グローバル-ローカル解析は、2つ以上のサブモデルを使用して全体モデルを解析するテクニックです。1つのサブモデルは構造全体を表しますが、精度は低く(たとえば、メッシュサイズが大きくなる)、一方のサブモデルは、構造の一部分しか表しません(たとえば、より小さなメッシュサイズを使用)。

全体(グローバル)構造が最初に解析され、選択した領域からの変位が補間されて局所(ローカル)構造に適用されます。グローバル-ローカル解析は、上記で説明したサブケース依存モデリングテクニックの使用によって実装されます。

グローバル-ローカルモデリングは近似にすぎず、その使用は、ローカルモデルが正確なほど全体構造の変位に及ぼす影響は少ないという前提に基づいています。このプロセスは、ローカルサブモデルでの剛性のわずかな変化がその外部のソリューションに大きな影響を与える可能性がある場合には、使用しないでください。

利用目的

グローバル-ローカル解析は、局所的な応力集中があるモデルにおいて結果の改善に役立つ場合があります。構造内のパートに、比較的高い精度を必要とする細かな部分がある場合は、それらのパートを細かいメッシュでローカルサブモデルとしてモデル化でき、構造全体は、粗いメッシュを使用してモデル化できます。これにより、構造内のパートのみが細かいメッシュで解析されることになり、解析時間を短縮できます。


図 1. グローバル-ローカル解析の適用例

Figure 1は、ピラー-ルーフジョイントを含むセクションが細かいメッシュで別個のサブモデルとしてモデル化される建造物の例を示しています。メッシュが細かいほど、高い応力が集中する領域での精度が高くなります。グローバル-ローカル解析機能を使用すると、粗いグローバルモデルからの結果が補間され、切断面でローカルモデルの細かいメッシュに適用されます。これにより、ローカルモデルの結果をグローバルモデルの結果から導くことができます。

ワンステップサブモデリング

グローバル-ローカルモデリングの機能は、サブケース依存モデリング機能およびサブケースセレクターエントリGLOBSUBを使用することで実現されます。このエントリは、ローカルモデル定義を含むサブケースにおいて指定されます。

ローカルモデルのGLOBSUBサブケース情報エントリでは、特定のローカルモデルの結果を計算する際に使用するグローバルモデル(SUBCASE ID)を指定します。
注: このグローバル-ローカルの関係は、これら2つのサブケースにのみ適用されます。入力デックにはこのようなペアが多数存在していることがあるので、複数のサブケースを‘グローバル’として設定でき、任意のペアのローカルモデルを別のサブケースのグローバルとして使用できます。

GLOBSUB - サブケース情報エントリ

全体モデルは、高い応力が集中する領域、もしくは、より高い精度が求められる対象領域を含むいくつかのセクションから構成されます。このような場合、モデル全体はより粗いメッシュで解析でき、対象となるサブモデルが定義されている各ローカルサブケースではその全体構造がGLOBSUBエントリを使用して参照できます。局所構造内の変位の切断面にある節点のセットもここで指定する必要があります。

フォーマット

GLOBSUB, SUBID, SID

SUBIDフィールドでは、SUBMODELによるグローバル構造定義を収めたサブケースの識別番号を指定し、SIDフィールドでは、変位の切断面を設定するローカル構造に節点のセットを指定します。全体構造からの変位は、このセットの節点に適用されます。
注: このセット内のすべての節点は、ローカルサブストラクチャに属しているはずです。詳細についてはリファレンスガイドをご参照ください。

グローバル-ローカル解析に使用する入力ファイルの例を以下に示します。
$ Subcase Information Section 
SUBCASE 1
$ Submodel specific SPCs and LOADs can be defined here.
SUBMODEL, 11
SUBCASE 2
$ Submodel specific SPCs and LOADs can be defined here.
SUBMODEL, 12
GLOBSUB, 1, 15
BEGIN BULK
SET, 11, ELEM     $ defines the global structure, for example, the full building 
		  $ in Figure 2 
SET, 12, ELEM     $ defines the local structure, for example, the pillar-roof 
		  $ joint in Figure 2
SET, 15, GRID     $ defines the cut surface, for example, the interface grids of 
		  $ the pillar-roof joint in Figure 2 at which the displacements are                  $ interpolated. 
. . .

保存とリスタート

ワンステップサブモデリングの保存 / リスタート機能を使用して、1つまたは複数のグローバルサブケースの結果を保存できます。また、ローカルサブケースの入力デックの修正および / または解析対象とするローカルサブケースの追加を選択し、グローバルサブケースを複数回解くことなしにモデルを再実行することも可能です。グローバルサブケースの結果は、それ以前に保存されたリスタートファイルから復元できます。これは、線形静解析でのみサポートされています。
注: リスタートジョブがGETDISPを用いて実行される場合でも、グローバルサブケースは存在していなければなりません。その場合、グローバルサブケースのソリューションはスキップされ、結果はGETDISPで直接復元されます。
保存するサブケースのコントロールセクションに、以下のエントリを挿入します。
ASSIGN, SAVEDISP, <Filename>
復元するサブケースのコントロールセクションに、以下のエントリを挿入します。
ASSIGN, GETDISP, <Filename>

詳細については、ASSIGNの入出力オプションエントリをご参照ください。

コメント

  1. ローカルとグローバルのサブ構造間のソリューション遷移には、切断面セットSIDに属する各節点位置における変位と回転を補間するために、グローバルモデル内の2次元および3次元要素が使用されます。グローバル構造にある切断面の近傍に、梁、ロッド、剛体などの他の要素を配置しないことをお勧めします。そのような要素がローカルモデルに影響を及ぼさないようにするためです。グローバル構造の中で1D要素または剛体要素にのみ結合している節点が存在しないように切断面を選択する必要があります。
  2. ローカルモデルの切断面近傍にある要素での解は、グローバルサブ構造からの補間によるノイズを導くことがあるので、結果から除去する必要があります。応力集中などの実際の関心領域は、ローカルモデルの中で2つの要素層分以上、切断面から離れた位置に配置する必要があります。
  3. 切断面は、構造の切断面上にある節点のみで構成した面とする必要があります。通常、荷重または支持条件のない自由エッジ / サーフェスは、切断面の一部となり得ません。
  4. 切断面節点がローカルモデルの境界上にのみ存在している必要はありません。シェルサブモデルについては、要素の外側の層にすべての節点が含まれているのが都合がよく、これは、サブケース間の回転の伝達精度が向上するためです。
  5. グローバルサブモデルの特定の荷重条件や支持条件がローカルサブモデルの範囲に収まっている場合は、そのローカルモデルと矛盾しない荷重としてそれらを表現することが推奨されます。例えば、グローバルシェル構造の点荷重は、ローカルソリッドサブ構造上の同等な分散荷重に置き換えます。ローカルサブモデルには荷重条件や支持条件を適用しない方法もあります。そのような場合、元の荷重 / 支持領域内の節点は、グローバルサブモデルからの変位が補間され、ローカル構造に適用されるよう、切断面内に含まれるべきです。ただし、これを行うと、ローカルソリューションの精度はかなり低下します。
  6. 切断面を表す切断面は、その構造内で複数存在していてもかまいません。グローバルモデルの要素サイズよりも小さい距離で複数の切断面が隣接しないようにします。
  7. 切断面内の各節点について、OptiStructは最も近い要素群(各要素の中心位置に基づき、グローバルモデル内のシェル要素またはソリッド要素)を選択して、これらの要素の全節点の解を使用して、切断面の節点位置に補間します。結合されていないサブストラクチャ(例えば、接触しかけている2つのシェル要素)が切断面に含まれる場合、この補間は他のサブストラクチャからの節点を含まなくなることに注意が必要です。このような場合は、PARAM,GLOBEXPT,0を使用して、補間に使用する要素を少なくすることができます(これにより、グローバルモデル内の要素の中心近くに位置する節点のみが使用されるようになります)。
  8. GLOBSUBエントリは、必ず、対応するローカルサブケースより前に定義されている、グローバルサブケースのサブケースIDを参照する必要があります。
  9. この機能は、現在は線形静解析でのみ利用可能です。線形静解析からの応答を含んだすべての最適化タイプがサポートされます。
    • SPCFORCE / 残留力応答はサポートされていません。
    • トポロジー最適化の設計領域は、ローカルパート(複数可)の外部に置く必要があります。また、ローカルサブモデルに影響するすべての設計変数をグローバルモデルにマップする必要もあります。

ツーステップモデリング

このサブモデリング手法は、グローバルモデルの解析とローカルモデルの解析の2つのステップで構成されています。

  1. グローバルモデルの解析
    • この段階では、グローバルモデルを解析して、その結果をモデル情報(節点座標)と共に保存します。
  2. ローカルモデルの解析
    • ASSIGN,H3DRESを使用して、グローバルモデルで得られた結果を.h3dファイルからインポートしjます。
    • グローバルモデルのサブケースのうち、結果のインポート元とする特定のサブケースをIMPORT,SUBで指定します。
    • インターフェース / 伝導ゾーン(ローカル側)の節点に対して節点セットを設定します。
    • Mを使用してこれらの節点セットにSPCDを設定することにより、マッピングを指定します。
      注: SPCSPCDの組み合わせの代わりにSPCを使用して、マッピング変位を直接強制することもできます。
    • この節点セットにマッピングした強制変位が、ポイントクラウド補間を通じてOptiStructで内部的に計算され、適用されます。

グローバルモデルの入力ファイル

SUBCASE 1001 
	ANALYSIS STATICS	
	LABEL Global
	SPC = 10
	LOAD =20
	DISP (ROTA, H3D) = SET_ID
BEGIN BULK
..
Bulk data of the Global Model
..
ENDDATA

ローカルモデルの入力ファイル

ASSIGN, H3DRES, 100, global_model.h3d
SUBCASE 2001  
	LABEL Local
	ANALYSIS STATICS
	SPC = 200
	LOAD = 400
 
IMPORT (SUB = 1001) = 100
BEGIN BULK
.
.
SPC, 200, 1000, 123456, 0.0
+, GSET

SPCD, 400, 1000, 123456, M
+, GSET
SET, 1000, GRID, LIST
+, 61040, 61041, 61042, 61043, 61044, 61045, 61046, 61047,
+, 61048, 61049, 61050, 61051, 61052
ENDDATA

コメント

  1. 現在のところ、ツーステップサブモデリングプロセスでは変位結果のみをマッピングでき、ファイルフォーマットとしては.h3dのみがサポートされています。
  2. デフォルトでは並進変位のみがマッピングされるので、回転変位をマッピングするには回転変位を別途要求する必要があります。
  3. サポートされている解析タイプとしては、線形 / 非線形(SMDISP/LGDISP)静解析が挙げられます。