計算の高速化と精度の維持

AMS(アドバンストマススケーリング)は陽解法計算においてモデルの時間ステップを増加させることにより顕著に計算時間を節約します。これは付加された質量が系の併進運動エネルギーを増加させないことを除いて伝統的なマススケーリングと同様です。

非対角質量マトリックスが時間ステップの増加のためにその質量マトリックスのそれぞれの行で用いられます。集中質量であるM0が増加されると共にいくつかのMの値が非対角項で全質量が一定を保つように補償されます。1 伝統的なマススケーリングと異なり、AMSはモデルの高周波のみを修正し、低周波には大きな影響を与えません。

AMSの伝統的なユーザーコントロールのマススケーリングに対する利点は、併進運動エネルギーを増加させないことです。これより、伝統的なマススケーリングと比べて、結果の品質に重要な影響を与えずに時間ステップを著しく大きくすることを可能にしています。

AMSは全体質量を修正しないため、大きな時間ステップにおいてさえもAMSが作用された節点の全体の運動量は保存されます。大きな時間ステップにおいて、伝統的な/DT/NODA/CSTは計算に大きな量の質量を付加し、併進運動エネルギーを増加させます。

AMSには質量マトリックス計算に伴う計算コストの問題があります。その計算コストはモデル依存ですが、高い非線形性のモデルでは全計算コストの50%になり得ます。従って、サイクル当たりのコストは増加しますが、計算サイクル数は時間ステップの増加により減少します。例えば、伝統的な/DT/NODA/CSTの10倍の時間ステップを用いると、全計算時間は1/3になりました。したがって、経過時間において意味のある減少を見るために、最初は/DT/NODA/CSTの10倍の時間ステップを設定することを推奨します。

計算の収束と精度の良い結果は、目標時間ステップを伝統的なマススケーリングの10から20倍に設定することで得ることができます。製造シミュレーションでは、伝統的なマススケーリングの50倍を用いることが可能です。Courant条件は保持され続けるために、AMSを与えることで目標時間ステップでモデルの安定性が確保される必要があります。

モデルのいくつかの修正が高い時間ステップでの安定性増加に役立つかもしれません。以下はモデルの安定性を保証させるために推奨事項と提案です。
注: アドバンストマススケーリングは、Radioss特有のものです。計算パフォーマンスと結果の品質の低下無しにモデル全体に作用させることができることからアドバンストと呼ばれます。

バージョン14.0のAMS新機能

  • RBE2とRBE3の互換性

バージョン13.0のAMS新機能

  • 移動剛壁(node_ID > 0の/RWALL)との互換性
  • 固定剛壁(node_ID = 0またはブランクの/RWALL)を修正
  • デフォルト許容値をIE-4から1E-3に変更(Tol_AMS = 0 ⇔ 0.001)
  • 共役勾配法(C.G.)収束判定条件を改善
  • 非対角追加質量マトリックスを最適化
    注: 上記の改善点により発生する計算時間パフォーマンスのわずかな低下を補うためにAMS許容値が変更されていますが、結果の精度には影響しません。
1 Morancay, Lionel, and Gérard Winkelmuller."Dynamic condensation and selective mass scaling in Radioss Explicit."19ème Congrès Français de Mécanique (2009).